移行計画

  • 「現状」から「サステナブルな状態」へどう変わっていくかの具体的な段取りのこと
  • 「環境に配慮する」だけでなく「環境が変わっても会社が生き残る」ことも大事な考慮要素
  • 原因を減らす「緩和」と、被害に備える「適応」の両輪が必要

ざっくり言うと

「地球環境への負荷を減らしつつ、気候や自然が変わっても会社が潰れないように、商売のやり方を根本から変えるための『生き残り計画書』」のことです。

ちゃんと説明すると

「2050年までにCO2をゼロにします」などの目標に加え、環境が激しく変化し、規制が厳しくなるこれからの世界で、「どうやって会社を存続させ、稼ぎ続けるつもりなのか?」をまとめた、具体的な「方針」と「やることリスト」を指します。

この計画には、大きく分けて2つの視点が入っていないといけません。

  1. 外への影響(インパクト): 自社が環境汚染などをどう減らすか?

  2. 自社への影響(事業リスク・財務リスク): 台風や干ばつ、炭素税などのリスクにどう備えるか?

投資家や銀行は、これを読んで「この会社、環境規制が厳しくなっても大丈夫かな?」「気候変動で工場が止まったりしないかな?」という、会社の将来の安全性をチェックしています。

ここでは、全体像とそれぞれの種類、そして大事な視点について整理します。

1. 一般的な「移行計画」とは

脱炭素社会や自然と共生する社会に向かう中で、ビジネスの仕組みそのものをどう入れ替えていく(トランジション)かを示した計画です。

たとえば、ガソリン車メーカーの場合:

  • 外への配慮: 排気ガスを出さない電気自動車に切り替える。

  • 自社の生存: ガソリン車が販売禁止になっても売れる車を用意する、炭素税が導入されても利益が出る体質にする。

この両方を満たすために、工場のライン、部品の仕入れ先、従業員のスキルをどう変えるか? そのための資金はどうするか? を具体的に書いたものが移行計画です。

2. 気候移行計画(Climate Transition Plan)

一番メジャーな、「脱炭素」に特化した計画です。やISSB(SSBJ)やGXリーグ、CDPなどで求められます。

  • やること
    石油や石炭の使用を減らす(緩和)、気温上昇で工場が水没しないように場所を移す(適応)、炭素税のコスト増に耐えられるビジネスにする(適応)。

  • イメージ
    「健康診断で『このままだと倒れます』と言われたので、食事を変えて病気の原因を絶ちつつ(緩和)、万が一倒れても家族が困らないように保険や貯金を見直す(適応)、人生設計の見直し」みたいなものです。

 

3. 自然移行計画・生物多様性移行計画(Nature Transition Plan)

最近注目されている、TNFDなどが推奨する計画です。「自然や生き物」に関する計画です。

  • やること
    森を壊さない原材料に変える(緩和)、水不足になっても操業できる節水技術を入れる(適応)、自然災害に強いサプライチェーンを作る(適応)。

  • イメージ
    「自分の家の庭の手入れ」です。隣の家に迷惑をかけないように雑草や落ち葉を処理しつつ(緩和)、台風が来ても家の塀が倒れないように補強工事をする(適応)、その両方の計画です。

 

4. 大事な視点:「緩和」と「適応」

移行計画を作るときに、絶対に外してはいけないのが「緩和(Mitigation)」と「適応(Adaptation)」という2つの視点です。

  • 緩和(原因を止める)
    CO2を減らしたり、自然破壊を止めたりすること。「地球のために、悪いことを減らす」努力です。

  • 適応(被害に備える)
    気候変動による災害や、新しい規制・税金などの変化に対して、ビジネスが耐えられるように準備すること。「会社の生存のために、防御力を上げる」努力です。

 

なぜ両方必要なの?

 たとえば、一生懸命CO2を減らす努力(緩和)をしていても、地球温暖化ですごい台風が来る確率は上がっています。もし「適応(工場の水没対策など)」を考えていなくて、会社が被災して倒産したら、元も子もありません。 逆に、「適応」ばかりして自分の身を守っても、CO2を出し続けていたら(緩和不足)、炭素税で莫大なお金を取られたり、お客さんから「あの会社は環境に悪い」と見放されたりして、結局ビジネスは続かないかもしれません。

そのため、良い移行計画には「自分たちが原因を減らす努力(緩和)」と「厳しい環境変化の中でも会社を守る準備(適応)」の両方が書かれている必要があります。

まとめ: 移行計画は、サステナブルな時代における企業の「生き残り計画書」です。地球環境を守る「緩和」と、会社の利益や資産を守る「適応」の両方をセットで考え、ビジネスをどう作り変えていくかを示すことが重要です。

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