継続的排出への責任(Taking Responsibility for Ongoing Emissions)
ざっくり言うと
「ダイエット(排出削減)中だからって、今食べてるご飯(現在の排出)のカロリーがゼロになるわけじゃないよね。だから、その分もちゃんと社会に貢献して帳尻合わせようね」という考え方のことです。
ちゃんと説明すると
⚠この記事は不正確な情報を含んでいる可能性があります。いかんせん最近出てきた概念でして、すみません。。⚠
これまでSBT(Science Based Targets)といえば、「2050年までに実質ゼロにするために、毎年これくらい減らしましょう」という「削減(Reduction)」の話がメインでした。
でも、よく考えてみてください。2050年にゼロになるとしても、今日から2050年までの間、企業はCO2を出し続けますよね。
この「ゴールにたどり着くまでの間に出しちゃうCO2」のことを「継続排出(Ongoing Emissions)」と呼びます。 そして、「将来ゼロにするから今は許して」ではなく、「今出している分についても、ちゃんと責任を持って、気候変動対策にお金を出したり支援したりしようよ」というのが、この「継続排出責任」です。
SBTiの新しい基準(企業ネットゼロ基準 V2.0 協議ドラフト)では、これがかなり重要視されていて、企業がどれだけ「気候変動対策にお金やリソースを回しているか」を評価する仕組みが提案されています。
どうやって責任を取るの?
具体的には、自社のバリューチェーン(事業活動)の外側で、環境に良いことをします。 ドラフト版では、以下の2つのランク(表彰みたいなもの)が用意されています。
Recognized(認定):
とりあえず、今出しているCO2の1%以上に相当する量について、カーボンクレジットを買ったりして貢献する。
「まずはここから始めよう」というエントリーモデルですね。
Leadership(リーダーシップ):
こっちはガチです。自社の排出量全部(100%)に対して、カーボンニュートラルな世界に見合った価格(炭素価格)をかけ合わせて予算を作ります。
例えば、1トンあたり80ドル(約1万2000円)以上の価格設定が推奨されています。
その予算を使って、世界中の削減プロジェクトや技術開発にお金を出すわけです。
他の用語となにが違うの?
ここが一番ややこしいところですよね。似たような言葉との違いを整理しましょう。
1. カーボンオフセットとの違い
「カーボンオフセット」は、よく「お金を払ったから、私の排出はチャラ(実質ゼロ)です」という文脈で使われがちです。 一方、「継続排出責任」は、「自社の削減(ダイエット)は絶対にサボらない」が大前提です。 「削減は計画通り頑張ってます。でも、どうしても出ちゃう分があるから、その迷惑料として社会貢献します」というスタンスです。だから、これをやったからといって「当社の排出量はゼロです」とは言えません(※SBTiの文脈では)。
2. BVCM(バリューチェーン外緩和)との違い
BVCMの新しい名前だと思って大丈夫です。 これまでは「BVCM(Beyond Value Chain Mitigation)」と呼ばれていましたが、SBTiのV2.0ドラフトで「緩和(Mitigation)」だけでなく、気候変動への「適応(Adaptation)」や「技術開発(R&D)」なども含む広い概念になったため、「継続排出責任」という名前にリニューアルされました。 「緩和だけじゃなくて、もっと広い意味で責任取ろうぜ」というメッセージですね。
3. 中和(Neutralization)との違い
これは「タイミング」と「質」が違います。
中和: 2050年(ネットゼロ達成年)に、どうしても削りきれずに残った「残留排出(Residual Emissions)」を、大気中からCO2を除去する技術(植林やDACなど)で消し去ること。これは「ゴール地点」での話です。
継続排出責任: 2050年に向かう「途中経過」の話です。除去だけでなく、削減回避(森林保護など)や技術投資も含まれます。
実務担当者へのアドバイス
「削減だけでも大変なのに、お金まで払うの!?」と思った担当者の方、落ち着いてください。 SBTiのV2.0ドラフト(2025年11月時点)では、この継続排出責任は2035年までは基本的に「任意(Optional)」です(Category A企業は2035年から一部義務化の提案あり)。
ただ、以下の点から今のうちに検討を始めるのが吉です。
ICP(社内炭素価格)の導入準備:
「Leadership」要件にあるように、自社の排出量に値段をつける考え方が主流になってきます。まずは低い価格(1トン数千円〜)からでも、経営判断に炭素価格を組み込む練習をしておくと良いでしょう。質の高いクレジットの目利き:
将来的には「なんとなく安いクレジット」は評価されなくなります。SBTiは「除去(Removals)」と「削減(Reductions)」のバランスや質を厳しく見る方向です。「とりあえず買っておく」ではなく、自社のブランドストーリーに合うプロジェクトを探し始めましょう。レピュテーション(評判)対策:
競合他社が「うちは継続排出責任も果たしています(Recognized取得)」とアピールし始めた時、何もしないと「削減しかしてない(社会貢献してない)企業」と見られるリスクがあります。まずは排出量の1%程度から、少額でも予算を確保するロジックを組んでおくと安心です。
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